APDSの確定診断を行う唯一の方法は遺伝子検査です1,2。2023年5月に発表された日本のAPDS診療ガイドラインに診断のフローチャートが示されています3。
APDSは常染色体優性遺伝として遺伝します。つまり、片方の親から病的変異を受け継ぐとAPDSに罹患するということになりますが、ある大規模コホート研究ではAPDS患者の約20%がde novo変異を有する可能性が示唆されています。APDSが多様な臨床症状を示すため、同じ家族内でも追跡が困難な場合があります1,2-6。
APDSの症状が多種多様であるため、患者は診断に至るまでに7-8年にわたって最大6つの異なる診療科を受診し、さまざまな対症療法を受ける場合があります。日本人患者を対象とした調査では、発症から診断までの平均期間は14.4年と報告されました7。
以下のような臨床症状と検査所見が共にみとめられれば、APDSである可能性が高くなります8,9:
APDSの診断に要する期間を短縮することによって、さらなる症状の発現を防ぐことができます。
臨床検査 | APDSの特徴的な検査所見 |
白血球分画を含む血液学検査 |
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Igレベル |
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ワクチン接種試験 |
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フローサイトメトリー |
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血液内科医や腫瘍内科医は、APDSのような原発性免疫不全症で以下の症状を示す患者に遭遇する可能性があります:
リンパ増殖1,2
自己免疫性血球減少症1,2
悪性疾患(主にリンパ腫)1,2
このような患者では遺伝子スクリーニングを考慮します。さらに、以下を呈する患者ではAPDSを疑い遺伝子検査を推奨します:
リンパ節腫脹、脾腫、血球減少、リンパ腫はAPDSと自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)の両疾患に共通する症状であることから、APDS患者はALPSと誤診されることがあります。5,6 ALPSの可能性が高いが確定診断には至っていないという患者は、確定診断のため、遺伝子検査を推奨する必要があります。
遺伝子検査はAPDSを診断する唯一の方法である。CVIDの診断を受けている患者はAPDSの可能性を疑い精査をする必要がある
遺伝子検査はAPDSを確定診断する唯一の方法であることから、以下の合併症のうち少なくとも2つを有する人は遺伝子検査を考慮します1-4:
遺伝子検査が標的治療につながる
血液学的検査による異常所見を呈した患者が遺伝子検査を行った結果、治療法のあるPIDが発見されることがあります。小児エバンス症候群患者80例を対象とした研究では、40%がPIDに関与する遺伝子の変異を有していることが発見され、そのうち29例が標的治療のある変異を有していました。治療法がないPIDに罹患している患者であっても、具体的な診断をつけることにより医療従事者がその後に発現する可能性のある症状を予測することができ、それをふまえて腸疾患や悪性腫瘍の評価などのモニタリングが可能となります。また、確定診断を受けることにより、患者は同じ疾患を共有する人々のコミュニティの一員となることができ、家族計画カウンセリングを受け必要に応じて準備をすることができるなど、適切な支援を受けることができます1-5。
APDSは常染色体優性遺伝により遺伝します1-5。しかしde novo変異体も発見されており、正確な有病率はわかっていないものの、大規模コホートでは患者の約20%がde novo変異によるものであることが示唆されました。
APDSと診断された患者の半数近く(40%)にPIDの家族歴があることから、家族歴を入念に聴取することが診断に特に有用です5,6。しかし、家族内でも同様の症状がみられないこともよくあります7。
APDSは50%の確率で親から子へ遺伝するため、APDS患者の家族も遺伝子検査を受けることが推奨されます4。